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僕が4人いる

 金曜日の夜、仕事終わりの港区で僕はプロメタジンとトラマドールを摂った。真っ青なプロメタジンの錠剤が僕の不幸をポップに変える。幸せが詰まった職場を出ると、急に不幸が恋しくなるんだよ。なんでだろう。

 最近、僕が4人いるの。ポジティブで時折可愛げのある職場の僕、おっちょこちょいで感情が少ない僕、不幸に包まれている僕、そして名前のない僕。
 なぜか職場の僕だけがどんどん幸せになってしまう。その分、本当に救いたい不幸な僕は、職場の明るさからどんどん遠ざかる。昼間の僕が笑えば笑うほど、夜の僕は影を濃くしていく。
 本当は君を救いたいんだよ。週末の不幸のな僕を。トラマドールを摂るとき、プレガバリンを摂るとき、僕は君に会う。週末の不幸な僕にそう語りかける。でも、君は僕の言葉に答えない。ただ、港区の夜を、悲しいほど美しい目で眺めている。

 電車に乗って港区を後にする。ああ、トラマドールが効いてきた。プロメタジンでまぶたも重いよ。交代しよう。週末は君の時間だもんね。
 電車が止まる。次の駅は、君の好きな秋葉原。いつものようにフラフラ降りると、街灯が君の影を長く引きずり、ワイヤレスイヤホンが大音量で君に叫ぶ。君は笑わない。職場の僕がまた目覚めるまで、この夜は君のものだよ。
 トラマドールの多幸感が僕を優しく抱きしめる。秋葉原のネオンが、君の視界をチカチカと刺す。トラマドールが体を優しく揺らしていて、プロメタジンの重みがまぶたを押し下げる。君は街の喧騒に飲み込まれる。いつものように、アーケードの下を歩く。イヤホンから流れる音楽の歌詞が、僕の頭の中でエコーする。僕は考える。なんで不幸がこんなに心地いいんだろう。
 もう呼吸が浅い。そんなことを気にも留めずトラマドールを追加で口に放りこんだ。身体の内側から止めどなく多幸感が滲み出てくる。

 僕は秋葉原の月の場所を知っている。いつものように少し路地に入って、ゆっくり空を見上げる。今日の月は綺麗だね、満月だもん。僕はとても好き。黒い雲に包まれて、月が灰色に輝いている。僕があの月だったらどうする?君の幸せに包まれて今輝いているよ。ほら、すごく綺麗でしょ。ねえ、君は僕のこと綺麗だと思う?いつか朝が来たらその答えを教えてね。

 プロメタジンが心地よく眠気を演出する。そろそろ帰ろうか。帰り道にアイスでも買ってゆっくり寝よう。
 最近、眠りを深めるためにアイマスクを買った。中途覚醒で朝に起きると、外から差し込む光が眩しくて寝れなくなるから。効果は抜群で良く作用している。
 僕は部屋を常夜灯にして、アイマスクを着ける。HEMのレインフォレストが部屋に香る。僕はゆっくり眠りにつく。

 目を閉じると不安に襲われて、咄嗟にアイマスクを外す。部屋に光る常夜灯が僕の心を癒やした。少しすると安心して僕は闇に溶けた。また明日、僕はプレガバリンを摂る。CBNを摂る。メマンチンを摂る。
 君はとても綺麗だよ。僕のために輝いてくれている。週末は君のために過ごそう。君の好きなところに行って、好きな音楽を聴きに行こう。
 君は優しいよ。君は素敵だよ。次の週末も、その次の週末も、楽しいこといっぱいしようよ。
 おやすみなさい。

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