
プレガバリンと天国へ
Healthcare productと書かれた小包がインドと台湾から届いた。僕にはこれが必要だ。だから無くなる前に必ず補充しなければならない。在庫が少なくなってくると、心の奥がざわついて落ち着かない。
青と白、緑と白のカプセルたち。正直、見た目はグロテスクで気持ち悪い。アルミシートに規則正しく並んで、僕を見上げて何かを囁いている。シートを押すとプチッと音がして、カプセルが手のひらに転がり落ちる。それでも僕は躊躇なく手を伸ばす。初めは感じていた恐怖も興奮も、今は関係ない。もう慣れてしまったから。
僕はとても恵まれた人間だと思う。何不自由なく育って、大学も都内の一応名の知れたところを出た。就活でも書類で落とされることはまず無かった。
家庭は少し複雑な事情もあるけれど、金銭面で困ったことは一度もない。「旅行に行きたい」と言えば、祖母が交通費もホテル代も負担してくれた。ある程度の欲しいものは何でも手に入る環境。それなのに僕は"僕の幸せな人生"が大嫌いだ。
大学時代、輝いて笑っている同級生たちの横で、僕は化学的に味付けされたプライベートブランドの安い炭酸を好んで飲んでいた。人工甘味料が変に甘くて、手に持ったペットボトルがやけに重く感じられて、彼らの明るさが眩しすぎて、僕だけが影の中にいるような気がする。
でも、僕は彼らと同じキャンパスに通う。それこそが僕が幸せで恵まれた人間であることの証拠になった。人生で不幸がないということが、こんなにも不幸なことだとは思わなかった。痛みがなければ生きている実感もない。幸せすぎる人生が息苦しくて仕方ない。しかし、僕が走るレールには幸福しか用意されていない。
プレガバリンを手にしてから僕の人生は変わった。たった3錠で心地良いボディハイが駆け巡る。僕が感じている不幸の分だけ幸せになる。過剰摂取する自傷の不幸に浸って、多幸感の波が心地良く包み込む。不幸を変換した幸福は大嫌いな幸せではなかった。
そして、僕の世界が誇張され始めた時、プレガバリンが僕を天国に連れて行く。数時間だけ、ほんの数時間だけ、僕は天国にいることができる。時間が蜂蜜のように甘く、ゆっくりと流れて、全ての苦痛が美しい体験に変わる。多弁になって、肌を撫でる感覚が気持ち良くて、CBNで鑑賞する音楽の世界が増幅されて。
この天国には必ず出口がある。だからいつか現実に戻らなければならない。そして、そんな日々を繰り返して、また次の小包を待つ僕がいる。インドから、台湾から、新しい天国への切符が届くのを。
この繰り返しが僕の日常で、僕の選択で、僕の人生だ。僕は幸せなのだから天国へ行かなければいけない。